38.

久しぶりの交換日記は緊張するものですね。

正直に言うと、とても迷いました。今になってこの交換日記の新しいページを使う権利が私

達にあるのかどうか、そして返事を書くすじあいが私にあるのかどうか。

ひょっとしたらあなたは、久しぶりにこのノートを読み返しでもして、初めて自覚したのか

もしれませんね。交換日記のやり取りは、あなたのターンで止まっていました。

それ自体を責める気はありません、だからあの時も、あなたが交換日記を返さなくなった時

に私は何も言いませんでした。

あくまで私が腹立たしく思うのは、自らの意思で埋もれさせていたノートを今更になって

私をほだす手段として使い、あまつさえその内容ときたら、自身を顧みたふりをして結局の

ところ傷つかないよう冗談交じりに文を綴っていて、現状を招いた全てをあなたから再び

突き付けられたような気分にさせられたことです。

 

ごめんなさい、取り乱しました。落ち着いたので、読まれなくてもいいように線を引いてお

きましたが、書いた時の気持ちも嘘ではないので勇気が出たら読んでください。

本当は文句なんかよりもずっと、あなたに伝えなければならなくて、なによりも今更伝える

必要のないことがあります。

怒ったり喧嘩したり停滞したり、あげく別れるという未来を私が選んでしまったのは事実

として消えませんが、私は今でもあなたが好きなのですよ。別れを切り出したのは私なのに、

明日には考えが変わってしまうのではないかと、毎日びくびくしています。

好きだという気持ちがお互いに分からなくなって、とあなたは書いていましたが、そんなこ

とはありません。形は変わってしまっても、私は二人の関係性について真剣に考えてきまし

た。長い時間によって取り消し線を引かれても読める文章のように、二人の間を見ていまし

た。

だからこそ、別れを切り出しました。その選択はカッとなってしたものではなく、きちんと

考えたものです。こんなにも一緒にいたのですから、かつてはずっと一緒にいようと思った

二人なのですから、惰性や習慣で共に生きることは出来たと思います。でも、あなたとのこ

とを真剣に考えてきた自分を馬鹿にしたくありませんでした。

私のイルカのキーホルダーは今でも私の鍵についています。色も落ちてしまったけど、ちゃ

んと私のところにしがみついていてくれました。

こんなことを書くのはよくないですね。気が変わってしまわないうちに終わります。

 

いつになっても構いません。声に出してでもノートの上でもいい、私達の間に流れた時間が

大したことだったとせめてそれだけでももう一度真剣に話したい。(この前の話し合いであ

なたは「そんな」と「冗談でしょ」くらいしか言ってなかったですから、あなたのそういう

暗い未来をまるで予期しない、希望に満ちたところを好きになったのかもしれませんけど

 

P.S.

どうなろうと私は続編を見に行きますよ。