6/9(水)ニューアルバム「花歌標本」のリリースに向けてオフィシャルインタビューを公開。
今週は中編をお届けいたします。
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「オレンジ」は試行錯誤した1曲
――「オレンジ」は岡﨑さんの作曲。
岡﨑 これは曲先でした。曲に合わせて、千野ちゃんが歌詞をつけてくれた。
――千野さんに渡す段階では、どれくらい出来上がってたんですか?
岡﨑 一応、雰囲気とかフルに作った状態でしたね。これもアレンジャーの伊藤さんが絡んでくれて。サビ頭を変えてくれたりしてくれて。バンドでいろいろ試行錯誤しながら、今の形になりましたね。
――もしかして最初はもっとフォーキーでした?
岡﨑 そうです、そうです。アコギでジャカジャカやってもいいなと思って作ってましたね。それがラストのサビに出て来る。歌詞で言うと<なだらかな坂道で>あたりに出てきてますね。
――でこの曲、始まりは、AORだと思ったんですよねぇ。
岡﨑 あぁなるほど。僕、元々、そういうコード進行好きなんですよね。だからそう感じてもらえるのかもしれない。でもAORを意識して出した感じはなくて、自然に出て来たんですよね。
――これ作ったのはいつくらい?
高橋 2019年だよね。仮タイトルがそうだもんね。
岡﨑 あぁ。僕、仮タイトル、日付でつけてるんですよ。
――そうなの?(笑)2019年だと、もうエド・シーランとかが出て来た後ですよね。で、伺いたいのは、岡﨑さんが言うフォーキーっていうと、どういう音楽? 例えば私だと、ボブ・ディランとかに直結して、アコギでジャカジャカってなっちゃうんだけど(笑)、でも、2010年以降のフォーキーって、いろいろな要素が入って来て、そうとも言えないじゃないですか。
岡﨑 確かに。今、おっしゃった通り、作った時は、エド・シーランみたいに、アコギでフレーズを弾きたいなとは思ってたんですよね。でもどうしてもあの雰囲気は無理だなっていうか……スキルが追い付かなくて、却下になった。アコギで表現しきるのは、なかなか出来ないなってなって、じゃあ、あの雰囲気をバンドサウンドにしていこうと思いましたね。
――あぁ、しっかりバンドサウンドへの意識がアップデートされてるんですね。いいですね。では「標本」という曲について。これは伊丸岡さんの作曲ですね。
「標本」は歌詞をほぼ書き換えた
伊丸岡 元々僕、ピアノ習っていて。この曲は、ピアノで思いついたままフレーズを鳴らして、そっから作り始めたんです。これは歌詞はどうだっけ? 千野ちゃん?
千野 たぶん、1番だけ歌詞を書いて渡して、それに亮太が曲をつけてきてくれた。で、その後、ほぼ全部書き換えてます。
伊丸岡 そうですね。1番だけあって、それも元々はまったく違った歌詞でした。で、元々あった歌詞に、ピアノとドラムのバンドサウンドじゃない打ち込みくらいで、曲を作っていった。2番の歌詞がなかったから、1番の歌詞を2番に持って来て作ってんですけど、2番はバンドサウンドで構築していきましたね。
――「標本」は、1番はリズムと歌メロだけ。その後、2番はバンドサウンドに展開する。このコントラストが魅力ですよね。
伊丸岡 最初は全部バンドサウンドにしたいなと思ってたんですよね。でも1番を作っていく過程で、テクノに切り替わっていった。
――アンビエントに近いですよね。テクノ的なところは、上物のビートですかね。ビート細かいですもんね、他の曲より。
伊丸岡 後半はバンドっぽくなってますけど、伊藤さんに結構テクノよりのサウンドに変更してもらったんですよね。リズムとかもドラムのフレーズも、それでガラッと変わった。
高橋 この曲、初めてのシンバルを使ってるんですよ。高い音でコーンって鳴る、ベルってシンバルを導入したんです。音色の幅が広いシンバルなので、そこは結構、意識して叩きましたね。聴く人によっては、打ち込みに聴こえるかもしれないですね。この曲だけに限らず、今回のアルバムは全曲、ドラムテック(=ドラムのチューニングはもちろん、使用する楽器も含めて、楽曲に合ったサウンドメイクのご提案したり、ドラムの環境を整えてくれるプロ)の方がついてくれたんで、音色は1曲1曲、相談しながら決めていきましたね。
――宇佐美さん、「標本」のベースについてはどうです? 表現したかったことは?
宇佐美 やっぱりまずは1番と2番の違いを出したかったですね。1番は打ち込みで弾いてないからこそ、2番から人が弾いてるっていう、人力感を出せればと思って。実際は、2番も打ち込みっぽい音像ではあるんですけど、だけど、人が弾いてる感じをしっかり出したいと思いながら弾きましたね。
――なるほど。すごく感覚的な感想になるんですけど、2番から体温が上がった感じがしました。
宇佐美 そうなんです。だからそこが死なないように。
伊丸岡 2番は人間味が出て来てる。
――少し話を戻して歌詞について。曲が上がって来て、ほぼ書き直したとおっしゃってましたが、それはどうして?
千野 歌詞って書いたときに満足しても、読み返して“何これ”っていうことが多いんです。
――それは今でも?
千野 今でも。いつもあります。
――それは、夜に書いた日記を次の日の朝に読み返して“何これ?”みたいな感覚と似てますか?
千野 似てると思います。僕、常に言葉が思い浮かんだらメモったりしてるんですけど。「標本」はこのアルバムのために曲にしようってなって、曲が上がって来た時に、結構、壮大なイメージになったなと思ったんです。1番が全部静か(なアレンジ)って…って思って。“これは、大したことを歌わなきゃいけないな、大きなテーマにしなきゃ……”と思って、すごく悩みましたね。2番から体温が上がる感じがするってことも、すごくわかるし。だから歌詞を変えたんです。より広い歌詞にしました。
――テーマを背負った曲になりましたね。
千野 そうですね。レコーディングの直前まで粘って歌詞を変えてました。
取材・文:伊藤亜希