ベストアルバム『O₂ 〜太陽盤〜』『O₂ 〜月盤〜』リリースに向けて、今作に込めた想いやエピソードを、メンバーにロングインタビュー。

オフィシャルインタビュー【前編】【後編】【番外編】として順次公開いたします。

本日は【前編】を公開!どうぞご覧ください。

 

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◆タイトル

ベスト盤の良さって、例えばある飲食店に入って…

 

バンド結成15周年を迎えたGOOD ON THE REELが、初のベストアルバム2タイトルを同時リリースする。

 『O₂ 〜太陽盤〜』 『O₂ 〜月盤〜』と名付けられた両ベスト盤には、それぞれにメンバーがセレクトした13曲と新曲1曲、ボーナストラックとして現在では入手困難なデビュー前の自主制作音源1曲を収録。「本当にギリギリいっぱいまで使って(多くの曲を)入れた」という合計15曲が、収められている。

 『O₂ 〜太陽盤〜』 『O₂ 〜月盤〜』について、5人にロングインタビューを行った。

 前編は、ベスト盤に対するそれぞれの解釈や、タイトルの由来について。

 

柔らかい口調で、ちょいちょいメンバーの言葉につっこんだりする、このバンドの魅力のひとつ“メンバー同士の間合い”もご賞味あれ。

 

 

――まずはタイトル『O₂ 〜太陽盤〜』 『O₂ 〜月盤〜』の経緯を教えてください。

 

千野隆尋(Vo/以下、千野) メンバー全員でいろいろタイトル候補の言葉をあげて、その中から相談して選びました。最終的に、ドラムのまこっちゃん(高橋誠・Dr)が出した『O₂』が採用になりました。

 

伊丸岡亮太(Gt/以下、伊丸岡) 意外にも(笑)。

 

千野 そう、意外にも(笑)。いつもは僕がつけちゃうパターンが多いんですけど、今回は、ベストだから、みんながいいねって思うタイトルにしたいなと思って。

 

――高橋さん『O₂』ってタイトルはどんなきっかけで?

 

高橋誠(Dr/以下、高橋)仮タイトルで出ていた中に、「100」とか「0」とかって案があったんです。

 

千野 僕達のワンマンライブや主催イベントのライブは、ずっと「HAVE A “GOOD” NIGHT vol.〇〇」ってタイトルで、シリーズでやってきたんですね。それが、10月に開催される15周年記念ワンマンライブ(※注・10月16日・USEN STUDIO COAST)で「vol.100」を迎えるにあたって、これからも続くように……みたいな願いを込めて「100」とか「101」とかっていう数字や、そういう感じの言葉は候補として出てたんですよ。

 

高橋 それを見ていて「100」 の中には「0」が2つある。だから、O₂だなって。O₂っていったら酸素か……そういうの、ちょっとうちのバンドとつながるなと思ったんですね。だからO₂っていいなと思った。あと、今回のベスト盤は、2枚同時にリリースなので、盤が2枚っていうのもありましたね。それで『O₂』って一案で出してみたんです。自分では気に入ってはいましたけど、まさか選ばれるとは思ってなかった。意外です(一同笑)。

 

――そのように『O₂』というタイトルをセレクトする時点では、2枚同時リリースってことは決まっていたんですね。では、「太陽盤」「月盤」というサブタイトルは?

 

千野 そこは『O₂』が決まる前に決まってました。太陽も月も、両方とも丸いじゃないですか。だから盤の形(=〇)もイメージ出来る。そういう意味でも、まこっちゃんが出した『O₂』って、すごくいいタイトルと思いましたね。酸素ってないといけないけど、普段はあるのが当たり前すぎてみんな気が付かない。そういうところも素敵だなって思った。

 

――「太陽盤」「月盤」の収録曲をセレクトする際に、テーマになったものはあったんですか?

 

伊丸岡 太陽と月、シンプルに言えば陰と陽だと思うんですけど、かといって、単純に明るい曲、暗い曲っていうセレクトではなかったですね。言葉のイメージにあう感じで、なおかつ、「太陽」と「月」で対比が見えるように出来たらいいなと。

 

千野 GOOD ON THE REELのバンドロゴって、太陽と月をイメージして作ったんです。それも「太陽盤」「月盤」になった理由のひとつかな。

 

――つまり、バンドの元々のテーマの中に「太陽」と「月」というのがあったということ?

 

伊丸岡 「太陽」と「月」っていうよりも、日常ってことなんですよね。毎日って、朝から夜じゃないですか。そういう意味で、千野ちゃんが描く歌詞の世界に合っているのが、日常の1日だから。そこから出て来たイメージなんですよね。

 

千野 僕の歌詞は、わりと情景的な描写が多いので、日常につながるイメージも大きいと思う。

 

――あと、歌詞で言えば、上を…空を見上げているのを感じさせる歌詞が多い気がする。

 

千野 あぁ、そうかも、確かに。

 

伊丸岡 確かにそうですよね。

 

千野 そうなんですよね、僕らの上にいつもあるものが「太陽」と「月」だなっていう。今、都内に住んでるせいもあるのか、あんまり空を見上げたりしないけど、たまに見上げるといつもいてくれる存在、みたいな。曇りで見えてなくても、太陽はある。昼でも見えないだけで月もある。

 

――メンバー自身が収録曲をセレクトしたそうですが、具体的にはどのようにして決めていったんですか?

 

千野 まず基本的に、ミュージックビデオになった曲を入れる。

 

岡﨑広平(Gt/以下、岡﨑) それから各作品のリード曲は全部入れよう、と。

 

千野 もう本当にシンプル、そういう基準で選びました。それが1番、聴いてくれる人にもわかりやすいかな、と。

 

岡崎 ベスト盤ってそういうもんだよねっていうところ。

 

――では、いち音楽リスナーとして、ベスト盤ってどういうもの?例えば、ベスト盤は入門編だとかよく言われますよね。でも個人的は、興味を持ったアーティストがいて、その最初としてベスト盤を買うか、そのアーティストの代表作的なアルバム、名作と呼ばれるオリジナルアルバムを買うか、めっちゃ迷うんですよ。

 

千野 わかります!

 

岡崎 すごくわかる。

 

伊丸岡 めっちゃ迷いますね。すごくわかりますね。

 

千野 僕もそれすごく悩むんですけど、僕は「このアルバムいいよ」って言われて聴いてみて良かったら、そのアルバムのファンになっちゃうんですよね。

 

伊丸岡 俺もそっち派ですね。それで好きだったらもっと知るためにベスト盤を聴くってパターンもある。

 

千野 でもベスト盤はそのバンドの自己紹介でもあるから。

 

伊丸岡 そうなんだよね。ベストはわかりやすくそのバンドが出ていると思うから、こう……情報がなくても手に取りやすい。

 

宇佐美友啓 (Ba/以下、宇佐美)ベスト盤って基本的に曲数も多いじゃないですか。今回の僕達みたいに、2枚同時に出すとか、2枚組とかってケースも多い。それで人気曲だったり、リード曲も網羅してる。そういう意味では、どういう人が手に取っても、気に入る曲が必ず入ってるんじゃないかと思うんです。広くカバーしてくれるのがベスト盤だな、と。今回の2枚もそういうものになったらいいなと思ってますね。

 

岡﨑 ベストの良さって確かにあって。何ていうんでしょうかね……例えば、ある飲食店に入って。そこでは20年前から変わらないカツカレーが有名、みたいな店。

 

――ほほぅ。それから?

 

岡﨑 で、カツカレーを頼むべきなんだろうけど、今日は正直、チャーハン食べてみたいな、他のも食べてみたいなって思う。いろいろ食べてみたいんですね。そういう美味しいところをちょっとずつつまみ食い出来るって感覚が、僕の中でのベスト盤かな。ちょっとそっちの餃子もおいしそうだから、1個だけくんない?みたいな。それが他のアルバムとは違う、ベスト盤のいいところなんじゃないかなと思うんです。

 

――確かに。アラカルトのいいとこどりって印象はあるかも。

 

岡﨑 そうそう、そうなんです。アルバムはその作品によってテーマもあるから、コースっていうか。

 

――あぁ、わかる。作品性も重要になってきますからね。コース料理って、食材によって変わるから、全体的な印象とかテーマも変わってくる。

 

岡﨑 そう、まさにそういう印象なんです、オリジナルアルバムは。

 

千野 だったら、ミニアルバムだと……ラーメンと餃子のセットになる、みたいな。

 

岡﨑 そう。まぁ、ラーメンと餃子に関わらず(笑)、セットに近いかもしれない。

 

千野 わかりやすいね、それね。

 

――はい、すごくわかりやすいエピソードでした。好きな曲を聴き手が選べるっていうのが、ベスト盤の良さでもあるでしょうね。

 

千野 今回、『O₂ 〜太陽盤〜』 『O₂ 〜月盤〜』っていうベスト盤を2枚作ってみて、1番思ったのは、入れたい曲を全部入れられないってことだったんですよね。足りない。もっと聴いて欲しい曲いっぱいあるのにっていう。そのもどかしさをすごく感じましたね。

 

岡﨑 わかるわかる。それはある。

 

千野 リリースする側からしたら、ベスト盤ってきっと、そういうものなのかな、と。葛藤かかえて選曲したはいいけど、もっとこの曲も聞いて欲しいっていう気持ちが残るのがベスト盤だと思いますね。

 

岡﨑 今回も両方とも収録時間ギリギリまで入れてるんだよね。

 

千野 そう。でもぜんっぜん足りない(笑)。

 

 

取材・文:伊藤亜希