GOOD ON THE REELが観客と作り上げた祝祭―

-15周年記念ライブ『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.100 ~十五夜のうさぎ、何見て跳ねる?~』を開催。ライブ配信は10/20まで

 

GOOD ON THE REELは、結成15周年を迎えた5人組である。“歌ものをやりたい”と結成されたが、メンバーのルーツは多種多様で、そこが楽曲にも反映されている。エモーショナルなロック、シューゲイザー、抒情的なバラード、リズミカルなパワーポップ、少しフォーキーなメロディーライン、牧歌的なバラード…と、非常に楽曲の幅が広い。また、ボーカルの千野が描く日本語を大切にした描写、独特のストーリー性がある歌詞にも定評がある。ダブルギターを生かしたバンドアンサンブルは緻密ながらダイナミック。ライブのスケール感も申し分ない。15年という歴史をしっかりバンドの栄養にしてきたバンドである。ゆえに、今のGOOD ON THE REELは一度触れたらもっと触れたくなる――そう思わせるバンドになっている。

 

初のベストアルバム『O₂ 〜太陽盤〜』、『O₂ 〜月盤〜』を2枚同時に発売したばかりのGOOD ON THE REELが、10月16日、USEN STUDIO COASTにて15周年記念ライブ『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.100 ~十五夜のうさぎ、何見て跳ねる?~』を開催した。

“HAVE A “GOOD” NIGHT”とは、彼らのワンマンライブや主催イベントのタイトルだ。この日は、その100回目。15周年と並び、ダブル記念日となったライブは「こんばんは、GOOD ON THE REELです。どうぞよろしく」と、両手を広げて観客の拍手を受け止めた千野のひとことで始まった。

序盤。「夜にだけ」では濃紺の夜に沈み、「赤いリップ」では真っ赤に染まったステージのライティング。耳に響く言葉と視覚の中に広がる風景が、見事にリンクした。前述したベストアルバム『O₂ 〜太陽盤〜』に収録された新曲「SUNRISE」に続き「夕映」を披露。前者は2021年、後者は2011年のリリース曲だが、サウンドにも歌詞にも差異を感じさせないあたりに、バンドの実力が浮き彫りになってくる。10年の月日を“太陽”という、誰もがすぐ情景を思い描くことが出来るモチーフで紡いでくれたことで、千野の歌詞が、いかに不変的で普遍的かもわかった。彼らとともに歩み、観客と一緒に育まれてきたライブのキラーチューン「素晴らしき今日の始まり」や「サーチライト」では、メンバーと観客のクラップのタイミングも完全に一致。千野の「もっともっと盛大に今日を祝おうじゃないか」と、コロナ禍の中、観客の笑顔を思い出しながら作った『O₂ 〜月盤〜』に収録されている新曲「月祭」へ。ポップなメロディーとダンサブルなリズムが同時進行する爽快なアップチューン。<手を叩こう>という歌詞に合わせて、観客の拍手がどんどん大きくなる。シンガロングのパートでは、観客に代わり、ステージ上のメンバーが全身全霊を使って声を出す。その真ん中で、千野の歌声が、ぐんぐん上昇していく。例えるなら、ジャックと豆の木だ。千野は、ボーカリストとしてはスロースターターだが、決して、前半声が出ていないわけではない。十分過ぎるほど喉も開いているのだが、そこが後半に向かい、ロングトーンやヴィブラートに倍音がかかり、独特のグルーヴに変わっていくところがすごいのだ。少しハスキーさもあるクリア過ぎない千野のハイトーンは、どれだけ柔らかな日本語を歌おうが、ピュアなメロディーを歌おうが、楽曲をロックとして印象付ける。本編の最後は、最新オリジナルアルバム『花歌標本』のテーマにもなった曲「標本」だった。

アンコールでは「手を取れなくても、お互い向き合って心を取り合って、支え合って。今だからこそ、この曲をやりたいと思います」と「手と手」へ。千野は、ずっと手を伸ばして歌い続けた。そして曲が終わった後、こう言った。「今、すげぇつながったと思う。オレもずっと手を挙げてたし、みんなもずっと手を挙げてくれてたから」。ラストは抒情的なバラード「より」を。GOOD ON THE REELの5人は、丁寧に演奏し、ひとことひとことを噛みしめるように歌った。アンコールを含め、新旧を網羅したセットリストは全部で20曲。演奏を終え、ステージ前方に出て来て並んだ5人は、満面の笑顔で万歳した。あっという間で、じつに生命力に溢れたライブだったと思う。祝祭よろしく、彼らが放出したこのエネルギーが、観客の新たなエネルギーになったに違いない。

 

この日、ロビーはメンバーのアイデアで、過去の写真などが壁一面に飾られたりと、“GOOD ON THE REELの15周年展示会”のようになっていたが、終演後、観客は、それぞれが見つけた“自分の最高のGOOD ON THE REEL”を撮影したり、記念写真を撮ったりしていた。マスクをしたままシャッターを切る観客たち。ロビーに終演後のざわめきや歓声は無かったが、高揚は確かにあった。多幸感がロビーに充満していた。

最後に、この日の千野のMCで、最も印象的だった言葉を紹介しよう。

「僕らにとっては記念すべき今日。いつか“こんなことがあったなぁ”とか思い出したときに、笑顔になってくれたら。気づいたら隣にいるような、そんなバンドでいたい。これからもGOOD ON THE REELをそばにおいてください」

 

 なお、この模様はライブ配信もされ、10月20日までアーカイヴで視聴することが出来る。

 

 

 

文・伊藤亜希

写真・佐藤広理

 

 

SETLIST

01 砂漠

02 交換日記

03 You&I

04 夜にだけ

05 赤いリップ

06 コワシテ

07 SUNRISE

08 夕映

09 あとさき

10 So Late Me

11 小さな部屋

12 素晴らしき今日の始まり

13 サーチライト

14 灯火

15 月祭

16 ハッピーエンド

17 私へ

18 標本

 

ENC1 手と手

ENC2 より